夜明けはまだ遠い(1/15追記)

前回の記事で触れた日本バレーボール協会の理事会が開催され、一連の不祥事に関する処分が発表されました。
ビーチバレーボール国際大会でのキャンセル申請・不適切処理に関する処分について
https://www.jva.or.jp/index.php/topics/20220113-1

処分の詳細は上記のリンク先を見ていただくこととして、会長である嶋岡健治氏の解職は当然ですし、実際に診断書の偽造を行った小田勝美氏のビーチバレーボール事業本部副本部長およびビーチバレーボール強化部長解任も妥当だとは思いますが、それでも一般的な感覚からすると甘いのではないかという印象です。第三者委員会の調査報告書にあったように、今回の診断書偽造は私文書偽造(刑法第159条第1項)の構成要件に該当し、違法性を阻却する事由も認められません。もちろん、責任を阻却する事由も認められるとは思えません。したがって本件は刑事司法の場において裁かれるべきものです。本来であれば、関係者を自ら処分するだけでなく、相応の刑事責任を取らせるべく刑事告発をするべきだと思っています。

また当事者である日本バレーボール協会が今回の不祥事をどこまで深刻に捉えているのか、疑問を抱かざるを得ないツイートが、日本で唯一のビーチバレーボール専門誌「ビーチバレースタイル」の編集長である吉田亜衣氏(@yossy_ai)よりなされました。以下引用します。


これだけだと紀伊氏が代行を務めることの異常さはなかなか伝わらないと思いますが、「ビーチバレースタイル」の理事会報告会に関する記事には以下の記述があります。

“2020年12月4日当時、ビーチバレーボール事業本部本部長を務めていた紀伊良文氏は「第三者委員会の報告書にもあるように隠蔽の事実は共有されていたが、2019年の不適切処理の流れには関わっていない」(松下敬副会長)とのことで処分対象外。部下の監督不届きということで厳重注意を受けた。”

いくら不適切処理に直接関わっていなかったとしても、隠蔽の事実を知りながら黙認し厳重注意を受けた人物が、その不祥事に関する処分の結果、代行とはいえビーチバレーボール事業本部本部長に返り咲くというのは常軌を逸しており、理解しがたいものがあります。そもそも厳重注意で済ませたのが甘すぎるのではないかということとあわせ、世間一般の感覚に照らした場合に、とても理解されるとは思えません。

今回の不祥事は法に触れると思われる診断書の偽造がなされ、しかも組織のトップである会長をはじめとする理事がそのことを知りつつ組織的に黙認・隠蔽し続けたという公益財団法人として決して許されないものでした。にもかかわらず、ここまでに触れた2点にのみ絞ってもその認識・対応がいまだに甘すぎ、公益財団法人として認められるだけのガバナンスや信頼はもはや存在しないと言わざるを得ません。公益認定が取消になってもおかしくないほどです。

旧弊を打破すべく、ここは一度日本バレーボール協会そのものを解体し新たな組織を設立するぐらいのことはしてもらいたい気持ちです。仮にそれが現実的に難しいものがあるならば、最低限、徹底的な人の入れ替えと外部からの厳しいチェックを定期的に受ける体制の構築ぐらいはやってもらわないといけません。

バレーボールという競技がこれから先も発展していくために、現在そしてまだ見ぬ未来の素晴らしい選手たちが活躍する場が消え去らないように、ありきたりな表現ではありますが「ピンチをチャンスに変える」ことが必要です。単なる一ファンとしてはせめて声を上げ、バレーボール界で実際に現状を変えようと頑張っている方々を後押ししていきたいと思います。

※1/15追記
1/15にスポーツ報知のサイトに掲載されたこの記事によると、解職となった嶋岡健治会長が事実上選出した理事17人がそのまま残るとのことです。日本バレーボール協会には、組織として新しく生まれ変わろうというつもりは全くないことがこの一点からでも伝わってきます。理事が今のままでは、記事にあるように実業界から新しい会長を招くことができたとしても単なる置物扱いされ、現在の体質がそのまま温存されてしまう未来しか想像できません。日本バレーボール協会を建て直すには、公益認定の取消などを契機に組織そのものを解体し作り直すしかないのかもしれません。そこまで追い込まれたときに、果たしてバレーボールをプレーできる場がどれほど残っているのでしょうか。