第三者委員会の調査報告書の概要 その2

昨日は
ビーチバレーボール国際大会でのキャンセル申請不適切処理に対する第三者委員会の調査結果について
https://www.jva.or.jp/index.php/topics/20211217-1
※調査報告書はこちら (pdf)
に記載された事実経過(第2章)に絞ってまとめましたが、調査報告書にはそれ以外にも今回の一連の事象の原因、再発防止策、関係者の処分についての記載があります。処分についてあれこれ検討しても仕方ないため、この記事では原因、再発防止策についての記載をまとめます。この記事においても昨日の記事同様、主観の入る解釈やコメントはせず、別の機会に行う予定です。

今回の一連の事象の原因(第3章)
1.ビーチバレーボールのワールドツアーのエントリー・キャンセル申込はかなり煩雑であるにもかかわらずそれが実務担当者以外には理解されておらず、常勤でない(週2回勤務)者一人にそれらを担当させ、エントリー手続以外は第三者によるチェックも行われていなかった。この背景には、ビーチバレーボールに対する無関心がある。
2.2019年12月当時のHP事業本部はインドア部門とビーチバレーボール部門が混在していたが、縦割り意識が強く、相互に補助し合う姿勢がなかった。
3.エントリー手続において第三者のチェックが行われるようになったのは2017年にエントリーミスが発生したためであるが、キャンセル手続においては何らの対策もとられなかった
4.診断書の偽造については、私文書偽造(刑法第159条第1項)の構成要件該当性が認められる。またSNSで公表されることを危惧して偽造に及んだ点で、コンプライアンス意識の欠如が明白であり、また事なかれ主義が背景にあったことと考えられる。
5.HP事業本部副本部長は「選手への(エントリーポイントに関する)ペナルティーを回避するため」に診断書の偽造に及んだとしているが、これはキャンセルに関する規定を正確に理解できていなかったことが原因と思われる。
6.日本バレーボール協会の会長や事務局長、HP事業本部本部長らは遅くとも2020年12月4日の2,3日前までには診断書偽造の事実を認識したにもかかわらず、監事や理事会、コンプライアンス委員会に報告しなかった。さらに12月4日の記者会見においても問われなかったことから、それ以降も見て見ぬ振りを続け公表しようとはしなかった。この姿勢は2021年1月にキャンセルミスの関係者に懲戒処分をしたときにも続いていた。この無責任な対応は、組織のガバナンスが構築されていなかったことが原因である。

再発防止策(第4章)
7.エントリー及びキャンセル手続担当者の人的体制の強化責任の明確化を行うこと。また担当者が不在となる場合に備えて代役の用意マニュアルの随時更新も必要。
8.選手からのキャンセルの申し出が確定エントリーリストの発行期限である大会開始日21日前ギリギリに行われることが多く、これに対し的確に対応することは実際問題として厳しいと考えられることから、日本バレーボール協会独自のキャンセル期限前倒しについて選手の意見を踏まえて検討するべき。
9.日本バレーボール協会内の人事異動を定期的に行うなど事業本部間の垣根を低くすることで、縦割り意識を改善させること。
10.日本バレーボール協会全体で、各種業務・手続についてのリスクの把握・評価を行い、不正行為やミスが発生しない体制を構築すること。
11.コンプライアンス研修、危機管理研修を行うこと。
12.日本バレーボール協会に設けられていた、不正等の事実を認識したものが速やかに通報できる窓口についてはその存在を周知徹底し、同時に内部通報制度が利用者に信頼されるものにする必要がある。
13.危機管理体制を整備し、危機管理マニュアルを策定すること。
14.組織の体質を改善し、事なかれ主義、責任感の欠如から脱却すること。また不都合な情報が理事会に報告されなかったことを踏まえ、報告ルールを具体的かつ明確に定めるとともに、特定の職位にある者には報告義務を負わせること。

長年バレーボールを見てきた一人として、日本バレーボール協会の体質改善は相当難しいことだと思わざるを得ませんが、この先もバレーボールという競技が続いていくためにも、関係者にはこれまでの悪習から脱却し組織の透明性を確保してもらいたいと思います。

参考:刑法第159条第1項 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。