第三者委員会の調査報告書の概要
ご存じの方がどれぐらいいるのかはわかりませんが、ビーチバレーボール関係での不祥事に関する第三者委員会の調査報告書が12月17日に公表されました。
ビーチバレーボール国際大会でのキャンセル申請不適切処理に対する第三者委員会の調査結果について
https://www.jva.or.jp/index.php/topics/20211217-1
※調査報告書はこちら (pdf)
弁護士の先生方による第三者委員会の調査報告書ですので、いわゆる”お堅い”文書を読み慣れていない方には読みにくいものであり、本来であれば日本バレーボール協会(JVA)が調査報告書の具体的な内容についてわかりやすく公開するべきだと思うのですが、そのようなことは確認できる限りにおいては12月18日21:30現在まで行われておらず、また普段はバレーボールに関するニュースを流しているメディアにおいても詳しい記事が出てきていません。そこで、このあまりにも酷い今回の不祥事の内容を一人でも多くの方に知っていただき日本バレーボール協会の体質改善に繋がるよう、調査報告書の内容を多少なりとも分かりやすくまとめてみようというのがこの記事です。したがって調査報告書を読んで思うところはありますが、主観の入る解釈やコメントは別の機会に行うこととします。なお、個人の肩書きについては全て2019年12月時点のものです。
今回問題となった件の概要 (調査報告書 p.14 第2章)
まずはエントリーキャンセルの不手際に関連する事項について。
1.ビーチバレーボールのワールドツアー等のエントリーを事実上一人で行っていた担当者が2019月11月1日付で出向。担当者不在となる。
2.担当者がいずれ戻ってくることから、短期のアルバイトを雇うことを決定。HP事業本部副本部長とHP事業本部職員が異論を述べるも方針は変更されず、アルバイトが雇われた。なおエントリーについては前担当者の出向前同様、HP事業本部副本部長と専任コーチングディレクターがチェックすることとなったが、キャンセルについては特に定められなかった。
3.問題となったイラン大会の日程は2020年1月7日から10日まで。よって確定エントリーリストの発行期限は2019年12月17日(注1)。
4.日本人選手の出場枠は4チーム分だったため、日本チームの中からポイント上位4チームがエントリーすることとなった。
5.2019年12月16日午前8時9分、この4チームのうちの選手がエントリーをキャンセルする旨をメールにてJVAに通知。しかしこのメールは放置され、キャンセル期限の翌17日が経過した。
6.2019年12月18日に出勤したアルバイト(16,17日は出勤日ではなかった)がキャンセルメールに気づき、HP事業本部副本部長に報告するとともに前担当者に相談。医師の診断書とフライト証明書が必要だと判明。その旨をキャンセルを通知した選手に連絡するも、なぜキャンセル手続がされなかったのか、理由を明らかにするように求められた。
7.アルバイトは選手から求められた内容をHP事業本部副本部長に報告。HP事業本部副本部長はこのままだと選手にペナルティーが科せられること、診断書等があればペナルティーを回避できるが事の経緯から選手に提出させるのが難しいと思われることから診断書の偽造を決断し、HP事業本部職員に診断書の作成を指示。同職員はJVAのチームドクター名義の診断書を作成した。なお、診断書にサインはなされていなかったが、HP事業本部副本部長がチームドクターのものに似せてサインした。同時にHP事業本部副本部長は航空便のチケットも手配し、発行を受けた。
8.この診断書並びに航空便のチケットにより、キャンセルを通知した選手へのペナルティーは回避されたが、一方で本来であれば繰り上がって出場できるはずであった、ポイント5位のチームの出場機会は奪われることとなった。もっとも偶然にもポイント5位のチームの選手が2019年12月23日にエントリーをキャンセルする旨のメールをJVAに送信したため、この時点では問題は表面化しなかった。
次にキャンセルミスが発覚してからの隠蔽、公表の経緯について。
9.2019年12月20日、HP事業本部副本部長がキャンセルミスの件についてHP事業本部本部長も含めてメールで報告。ただしJVA事務局長には報告せず。
10.2020年1月から2月頃、HP事業本部副本部長はポイント6位のチームの選手と偶然会った際に、同選手が聞いていたキャンセルの件につき再発防止を要請された。HP事業本部副本部長はミスを認めた上で診断書を作成したことを話した。
11.2020年10月31日頃、上記の選手からビーチバレーボール強化委員会委員長がキャンセルミスを公表するよう要求された。HP事業本部副本部長は11月2日付でキャンセルミスに関する報告書を作成し、JVA事務局長らに報告した。
12.JVAは本件を公表しない場合、選手側からSNS等で公表されることを恐れ、2020年12月4日に公表することを決定。同時にビーチバレーボール選手が他の選手に暴行を加えた事件についても公表することとした。
13.公表直前の12月1日か2日頃、記者会見で発表する内容について検討する会議において、HP事業本部副本部長やJVA広報部長より診断書を偽造していたことが明らかにされた。
14.JVAは12月4日の記者会見において診断書の偽造について問われた際の回答も用意していたが、自ら公表することはせず、また質問もされなかったため、診断書の偽造について同日の記者会見では公表されなかった。
15.2020年12月15日に開かれたJVAコンプライアンス委員会において偽造診断書の件は認識されていたが、キャンセルミスの懲戒処分のみがなされ、診断書を偽造した件は審議されなかった。この懲戒処分については2021年1月14日に開催されたJVAの理事会において最終的に決定された。
16.2021年9月23日に記者から送られた質問状においてイラン大会のキャンセル手続がどのように行われたかを明らかにするように求められ、同記者が診断書偽造の事実を把握しているものと判断した。そのためこれ以上の隠蔽はできないと考え、2021年9月30日にキャンセルミスに関するリリースをJVAのホームページに出し、その中で診断書の偽造についても公表した。
事実経過についてはこんなところです。報告書にはこれ以外にも、本件が起こった原因、再発防止策、処分内容等が記されています。そして個人的にはここまででもおかしいと思うところがたくさんあり、コメントしたいこともあるわけですが、その点については最初に書いたとおり、別の機会にしたいと思います。
※(報告書にあった原因や再発防止についての内容はこちら、報告書やそれを受けての理事会について思うところはこちらとこちらに書きました)
※注1:大会にエントリーしたチームがキャンセルした場合
大会の21日前まではエントリーポイント下位のチームが繰り上がる。
21日前を過ぎてから大会開始5日前のスイス時間午後4時までに診断書とフライト証明書を添付して出場辞退申請書を提出すればキャンセルは可能。診断書とフライト証明書を添付しない場合はペナルティーとして罰金が科せられる。
大会開始5日前のスイス時間午後4時以降のキャンセルの場合は、必要な書類は同じだがペナルティーとして罰金が科せられ、かつその大会のエントリーポイントがポイント計算において0点扱いとなる。