FC東京バレーボールチームが活動休止を発表!(※12/9,10追記)

本日(12/8)、FC東京バレーボールチームの活動休止(実質廃部)が発表されました。本拠地の調布市に住む一人として残念でなりません。チームの公式発表は以下のリンクからご覧いただけます。
【バレーボールチーム活動休止のお知らせ】
https://www.fctokyo.co.jp/news/13098

長年バレーボールのファンをやっている身としては、廃部あるいは親会社の変更等によってチームや選手が大きな影響を受ける事態は、残念ながら何度も見てきました。新しいファンの方にとっては初めて目にするチーム名も多いかもしれませんが、男子では日本リーグ時代からの名門で強豪チームだった新日鐵や日本鋼管、富士フイルム、そしてNEC、女子では女子日本代表の中田久美前監督が所属していた日立(日立ベルフィーユ)、ダイエー、ユニチカ、イトーヨーカドー、東洋紡をはじめとするチームが廃部、またはチームの引き継ぎにより姿を変えてきました。

だからある意味では、その歴史にFC東京バレーボールチームが加わったんだね、と感じる方もおられるでしょう。ただ個人的には、今回の件は明確に日本バレーボールリーグ機構(通称Vリーグ機構)の目指していた方向性が完全に破綻している状態に陥っていることを表しているように感じます。

振り返ってみると、2016年9月20日に日本バレーボールリーグ機構は「Vリーグの未来構想」として「スーパーリーグ(仮称)」の立ち上げを発表しました。結果的にこの未来構想は検討時間が短すぎる等、既存チームからの反発が大きく、すぐに大幅な修正を余儀なくされました。ただここで提唱された「スーパーリーグ」は
1.独立した法人、または法人内に事業部を設置すること
2.チーム名にはホームタウンの地域名をつけること
3.若年層チーム及び常設スクールの設置
4.監督はプロでなければならない
5.完全ホームアンドアウェー方式を採用する
等、企業スポーツという側面が大きかったバレーボールというスポーツ(それゆえ、親会社の経営上の都合からチームの廃部がなされることが多々あった)を、一つの事業として成り立たせようという意欲的なものでした。

しかし今回のFC東京バレーボールチームの公式発表には、以下に引用する記述が見受けられます(赤字は筆者による)。
>取り巻く事業環境の変化、中長期的な事業成長の可能性Vリーグの将来に向けた事業化・高度化計画への対応等を総合的に検討した結果、活動を休止することを決定
「中長期的な事業成長の可能性」「Vリーグの将来に向けた事業家・高度化計画への対応」を理由としての活動休止を、国内最高峰のDIVISON1に所属するチームが決断したことの意味は重すぎるほど重いと思うのです。

バレーボール界は今、少なくとも男子は東京オリンピックでの活躍で追い風が吹いていたはずです。その男子バレーで起こった今回の発表。日本バレーボール協会や日本バレーボールリーグ機構の方々には同じような決断をせざるを得ないチームがもう出ないよう、すぐに現状の分析を行い、対策をとってもらいたいと思います。

今の世の中は、昔と違ってバレーボールに取って代われる「娯楽」などいくらでもあります。その中でどのようにしてバレーボールをプレーしてもらい見てもらい、そして事業として成り立たせて未来へと繋いでいくのか。「繋ぎ」はバレーボールで最も大切なことのはずです。今は日本バレーボール協会や日本バレーボールリーグ機構の未来への「繋ぎ」が、これまでのような選手やファンを裏切るようなものでないことを祈るような気持ちでいっぱいです。

※12/9追記
昨日は衝撃を受けすぎて書き忘れていたことが多々あり、また1日たって様々な記事が出てきたために若干追記します。
ご存じの方も多いと思いますが、FC東京バレーボールチームはその名前からわかるように、サッカーでJ1に属するFC東京同様、東京フットボールクラブ株式会社によって運営されていました。そしてその東京フットボールクラブ株式会社は先日、ミクシィがその経営権を取得したことが発表されていました。その時からバレーボールチームについての全然情報が出てこない状況が続き、ようやく出てきたのが昨日の発表だったわけです。

今後いろいろな記事が出てくることにより活動休止の決断に至った事情が徐々に明らかになってくると思われますが、今日の段階では1つだけ触れておきたい記事があります。

FC東京バレー「活動休止」の背景。チーム存続は困難な状況だったか――
https://halftime-media.com/news/fctokyo-volleyball/

この記事で触れられているように、FC東京バレーボールチームの選手のほとんどは東京ガスの社員であり、そこがサッカーチームと決定的に違うところだったと言えます。プロ選手であればチームの経営母体に変更があっても契約をどうするか等の問題になりますが、実業団選手であれば選手と同時に社員であるわけですから、経営母体が変わったからといってそのまま簡単に新チームへ移行、というわけにはいかないのは想像に難くないところです。

その点のみが今回の問題の全てだったとは全く思いません。しかし何度となくあったプロ化の機運をことごとく逃し、一部のチームを除いて福利厚生の一環としての企業スポーツというチームを維持運営していく側にとってある意味で「ぬるま湯」ともいえる環境を選択してきた日本バレーボール界の限界、行き詰まりが今回のFC東京バレーボールチームの活動休止を招いたのではないかと考えています。

確かに春高バレーは盛り上がります。先日行われていたインカレも好試合が多く、非常に良い大会でした。しかしVリーグのチームが減ってしまうことは、春高やインカレを目指して努力し才能を磨き花を咲かせた選手たちが、その先もバレーボールを続けていくことができる場・チャンスが減ることを同時に意味します。今後はそういったことがないよう、チームのあり方、リーグのあり方を根本的に見直さなければ未来がないところまでバレーボールは追い詰められてしまっているのではないでしょうか。

最後に世界でもトップレベルの名セッターの記事を翻訳したnoteをご紹介します。この記事で危惧されていることが日本でも起こっていると言わざるを得ないのかもしれません。バレーボールファンとして、非常に危機感を抱いています。
https://note.com/travel_sports/n/n06b6163ed3b9

※12/10追記
問題を抱えているのはバレーボール界だけではないようです。こういった記事をヒントにしてどんどん改革を進めていってほしいものです。我々ファンを含め、多くの人々にとって手が届かない世界で戦うアスリートたちに、明るい未来がありますように!
【変えるべき「ただ1つ」のこと】
https://note.com/sportmarketing/n/nc33276945f20