【ちょっと脇道3】バレーボールの解説は本当に「解説」の体を成しているか(※11/28追記)

S1ローテにおけるレセプションアタック関連の記事に補足したい内容があったのですが、時間がなかなか取れないうちに気になる記事を見かけてしまったので、寄り道をしてそちらに触れることにしました。一番気になったのが、記事の末尾にある「※ここで編集部からのお願いです。」以下の部分でした。わざわざこのようなことが書いてあるのが引っかかったんです。
※11/28追記 リンク先の記事から、該当部分が削除されてしまっているのを確認しました。日本バレーボール協会やVリーグ機構によるこれまでの報道その他への態度からいろいろと妄想をしてしまいますが、いずれにしても部外者としては確証がないのでうかつなことは言えません。自分にも、そしてこの記事を読んでくださっているバレーボールファンの方にもできることは、配信元(V.TV)へ自分たちがどのような配信を望んでいるかを地道に伝えていくことです。配信の品質・安定性、実況や解説の質への不満・要望といった点をはじめとして、リクエストをどんどん出していきましょう。

思えば自分の見聞きしている限りにおいては、今シーズンのV.TVの配信における解説の評判が良くないんですよね。V.TVの配信において解説者がどのように割り当てられるのか、そのプロセスにどのような変化があったのかは部外者である自分は全くわかりませんが、昨年とは明らかに傾向が違うように感じられます。

そもそもスポーツ中継・配信において「解説」には、どのようなことが求められるのでしょうか。
たとえばちょうど日本シリーズが行われている野球中継を見れば、合間には試合全体の展望やここまでのポイントになったプレー等を振り返りつつ、それぞれの回においては個々の局面における攻撃側・守備側の定石やその狙い、そしてその時の打者や投手に応じて具体的な投球内容、狙い球等が話されています。野球に興味を持ち始めたばかりのまだあまり詳しくない人であっても、こういった内容の解説を聞き続けて月日が経てば「ここはとにかくゴロを打たせたいから、膝元に落ちる球で勝負かな」とか「ここはランナーを進めるのにエンドラン、いやランナーの足を考えれば走らせてからエンドランもありだな」といったことを思い描きながら観戦できるようになっていきます。

翻ってバレーボール中継・配信における解説を見ると、どのような内容になっているでしょうか。
これから先はわかりませんが、少なくともこれまではバレーボールに興味を持つきっかけになったのがゴールデンタイムにおける国際大会の地上波中継だった、という人は多いと思います。ではそこでどのような「解説」が行われてきたでしょうか。
中継を見ていると特定の選手にのみフォーカスしたり、選手たちの心情的な面のみに関してコメントし技術的・戦術的なことは何も触れないことが目立ちます。また日本代表が思うような展開に持ち込めないときにもほとんどの場合「崩されているので切り替えて」「ここは大事ですよ」というレベルのコメントしかせず、なぜ崩されているのか、自分たちの狙いが相手のどのような対応により無効化されてしまっているかについては視聴者が知る機会すら与えられていません。さらには明らかに近年のバレーボールの戦術的なトレンドがわかっていなかったり、試合の中で局面が変わると平気で矛盾したことを言ったり、ひどいと最近台頭してきた選手の名前すら知らない、コート内で起こっていることに関係ない雑談レベルでの話を続けたりする場合も目立ちます。それでも「地上波はバレーをよく知らない人相手なのだから、マニアックな内容など求められていない」ということが、そのような「解説」をする側の言い分としてまかり通ってきました。

ところが今回の話の舞台であるV.TVの配信を見ているのは、自分から視聴契約を結ぶためにV.TVのサイトを訪れ、わざわざお金を払ってくれている人たちです。もちろん、特定の選手が見たいがために契約している人もいれば、贔屓のチームを応援するための人、バレーボールという競技の戦術等に興味を持っている人など様々な人がいるわけです。そういった人たちにより深くバレーボールという競技を楽しんでもらうために、選手たちが何を考え何を狙い、そのために何をしているのかを知ってもらうことも「解説」の大切な役割なのではないかと考えています。たとえ最初は特定の選手やチームさえ見られれば満足だったとしても、その選手やチームのやっていること・やろうとしていることが把握できるようになれば、より深い満足感を得られるようになるからです。

その点で言えば、冒頭に紹介した記事の河野氏はそんな「解説」と呼ぶにふさわしい内容を語ってくれる解説者の一人で、聞いていて勉強になることも多くありました。しかし今季はここまでに彼が解説者として登場したのは自分が知る限り2回しかなく、一方で昨年まではあまり見かけなかった雑談解説者が頻繁に登場したりしています。あくまで自分が知っている範囲ではありますが、今季のV.TVの解説の評判が昨季より悪いのはそういった変化が影響しているのではないでしょうか。

特定の選手のみに注目している人は、その選手がいなくなってしまえばその場から去ってしまうかもしれません。でもせっかく有料の配信を見てくれるほど踏み込んできてくれたのですから、それをきっかけにもっともっと選手のことを知ってもらうためにも、そしてバレーボールという競技そのものの醍醐味を知ってもらい息の長いファンになってもらう可能性を広げるためにも、「解説」というものの重要性が再認識されるべきだと思っています。

そのためにもV.TVの視聴契約をしている方はバレーボールマガジンの編集部からのお願いにあったように、どんどんV.TVに解説者のリクエストを出してファンが何を求めているのかが伝わるようにしてもらえたらいいな、と思います。リクエストはこちらから「お問い合わせ種類」を「ご意見ご要望」として出せばよいのではないでしょうか。

バレーボール界でも「解説らしい解説」が当たり前になる日を、ファンの一人として待ち望んでいます。