ブロック・システム (1/25追記)

これまで2回に分けて、ブロックの配置跳び方について話を進めてきました。今回はそれらを組み合わせたブロック・システムに関する話です。

親和性の高い考え方ブロック・シフトブロックの跳び方
マン・ツー・マンスプレッド・シフトコミット・ブロック
リード・ブロック
ゲス・ブロック
ゾーンバンチ・シフトコミット・ブロック
リード・ブロック
ゲス・ブロック

配置と跳び方の組み合わせは上記のようになります。さて、ではどのようなブロック・システムが現代のバレーボールにおいては有効なのでしょうか。当然ながら最適解はカテゴリーによっても異なってくるため、ここではテレビや配信で見る機会の多い、Vリーグや国際試合のレベルを想定していきます。

まず、相手の前衛が最大でも3枚、状況によっては2枚というバックアタックを考慮せずに済む前提なら、マン・ツー・マンは相手アタッカーに対して必ず最低でも1枚はブロックをつけることが可能になります。また 時間差攻撃 全盛の時代であれば時間差を打ってくるアタッカーがノーマークになることも防ぐことができます。この時、ブロッカーは相手のアタッカーをブロッカーがそれぞれ分担してマークするわけですから、スプレッド・シフト、コミット・ブロックになるのが合理的です。したがってマン・ツー・マンの考え方とスプレッド・シフト、コミット・ブロックは親和性が高いと考えています。
ところが現代バレーは、男女を問わず当然のようにバックアタックを使ってきます。この時点で、最大3枚のブロックによるマン・ツー・マンは不可能です。必ずノーマークのアタッカーが生まれてしまいます。
そこでリード・ブロックを採用する考え方になってくるわけですが、スプレッド・シフトとリード・ブロックはあまり相性がいいとは考えていません。

最初にバックアタックがどこから打たれるか、を考えた場合、相手オポジット(OP)はバックライトから打つケースが多いはずです。ただOPはもともと基本的にライトから打ってくるため、サイドのブロッカーがマークする事自体は変わりません。問題になるのは後衛アウトサイドヒッター(OH)のバックアタックです。後衛OHのバックアタックは、バックセンターから打ってくるのが一般的です。となるとスプレッド・シフトの場合、ミドルブロッカー(MB)がそのブロックを担当することになりますが、センターから打つ場合はアタッカーが選択できるコースの幅が広く、1枚ブロックでそれに対抗するのはかなりしんどいことは自明です。結果的にブロックで押さえられるコースも限定されてしまうため、フロアディフェンスが非常に苦しい状態になります。もちろんリード・ブロックならサイドブロッカーがヘルプに入ればいいだろうというのはありますが、現実的にスプレッド・シフトを採用しているチームでサイドブロッカーがヘルプに行く光景はまず見られません。

これに対して、相手の攻撃を最大4枚として想定するなら、「誰が打ってくるか」よりも「どこから打ってくるか」に注目して守ることが合理的になります。コート内にボールは1つしかないため、攻撃はボールの存在する場所からしか行われないためです。そうなると、ブロッカーは基本的にどのエリアにも移動しやすい中央付近に集まり、打ってくるアタッカーに対してブロックに行こう、という考え方になっていくのが自然です。したがってリード・ブロック、バンチ・シフトを採用する方向となり、これらはゾーンに親和性が高いと考えます。またブロッカー全員が中央に近いため、相手のセンター攻撃に対して両サイドのブロッカーがヘルプに行くことも容易になります。

以上を前提に現代のバレーボールを考えた時、バックアタックを含む4枚での シンクロ攻撃 を想定してディフェンスシステムを構築しなければならないことからすれば、ブロック・システムはバンチ・シフト、リード・ブロックを基本とすべきなのは明白であると考えます。もっともラリー中の状況や試合展開によって「ここで来るであろうあの攻撃を止めたい」という場合には、それをチーム内で約束事として共有した上でコミット・ブロックを仕掛けることもブロック戦術としては十分あり得ることですし、実際に世界トップレベルのナショナルチームの試合を見ても、リード・ブロックをベースとしながらも状況によっては積極的にコミット・ブロックを使っていることがうかがえます。
結論として現代のバレーボールにおいては、バンチ・リード・ブロックをベースに特定の状況ではコミット・ブロックを仕掛けていく、というのが合理的なブロック・システムなのではないかと考えます。

ところでバンチ・シフトの欠点の1つに、どうしても移動距離が長くなるためサイドからの攻撃に対してブロックが遅れがちになるというものがあります。「後出しじゃんけん」であるリード・ブロックを採用すれば、余計にそうです。では少しでも遅れないようにするためにはどうしたらよいのか、そういった点についてはまた別の機会に書きたいと思います。

(1/25追記)スプレッド・シフトでサイドブロッカーがヘルプに行かない理由は、主に2つあるのではないかと考えています。
1つ目はまず、セットアップからアタッカーが打つまでの時間の問題です。セッターとの距離が近いセンターからの攻撃の方が、遠い両サイドから打つよりも時間的に早いため、スプレッド・シフトでサイドブロッカーがヘルプに行こうとしても移動時間を含めて考えると間に合わない場合が多いと思われます。
2つ目として、これを受けてサイドブロッカーもセンターからの攻撃に対応することを考えているチームは、そもそもスプレッド・シフトを採用していないのだろう、ということです。