ディグ・フォーメーション

前回までブロックに関する話を続けてきましたが、スパイク を毎回ブロックすることは不可能です。そこで相手の攻撃を拾って切り返して行くにはどうしたらよいか、今回はフロアディフェンスについて考えたいと思います。

まず相手のスパイクがブロックを抜けてくる状況です。
1.ブロックの上を抜けてくる
2.ブロックの横(または間)を抜けてくる
3.フェイントでブロックをかわされる

このうち、1は基本的に諦めるというのが現実的でしょう。ディガーはブロックが抑えていないコースに位置するのが原則ですから、上からブロックの背後のコースに打たれたらどうしようもありません。というよりも、本来はそのコースにディガーがいる方がおかしいのです。また3に関しては無視できないものの、やはり攻撃において使われる本数から考えると主に対処する必要があるのは2で、フェイントの対処はその中でどう行うか、という考え方になると思われます。

ではフロアディフェンスにはどのようなバリエーションがあるのでしょうか。ディグ・フォーメーションをみてみましょう。

ディグ・フォーメーションは大きく分けると2種類、「マン・アップ・フォーメーション」と「マン・ダウン・フォーメーション」があると言われます。

このうち、「マン・アップ・フォーメーション」は古典的なもので、フェイントカバー要員1名をブロック2枚の後ろに配置し、残り3名でフロアを守るというものです。
マンアップ・フォーメーション

このフォーメーションは一見すると専門のカバー要員を配置しているためフェイントに強そうですが、実際にはブロックの影から相手のフェイントコースを見極めるのが難しいという問題点がありました。そのことへの対応としてフェイントカバーに入るタイミングを遅くするといったこともなされましたが、現状ではバレーボールの戦術の進化とともに淘汰されたと言えるでしょう。

「マン・ダウン・フォーメーション」には主に3つの類型があります。ボックス、スライド、ペリミターと呼ばれるものです。
ボックス・フォーメーションは、フェイント及びワンタッチボールのカバーをする選手が、状況に応じて変化します。
ボックス・フォーメーションこのフォーメーションはブロッカー以外の4人が四角い箱のような形となるため、ボックスと呼ばれるようになったようです。

スライド・フォーメーションは、状況に応じて役目が変わるボックスと異なり、2枚ブロック時にブロックに行かなかった前衛の選手がフェイントカバーに入るものです。
スライド・フォーメーションボックス・フォーメーションと似ている印象ですが、フェイントカバー要員が固定であることにより、クロス側のディガーが前に、バックセンターの選手がクロスの長いコースをカバーしに「スライド」していくことから、この名前で呼ばれています。

ところでこれまでの3つのフォーメーションをみて、 リード・ブロック との組み合わせを考えた時に共通の弱点があることに気づかれたでしょうか。

リード・ブロックはどうしても跳ぶのが遅れがちになるため、ワンタッチボールが多くなります。そのワンタッチボールをどうやってつないで自分たちが切り返していくかを考えた時、効果的なトレーニング等でパワーが増している現代のバレーボールにおいて、これらのフォーメーションではパワフルなスパイクにより大きく弾かれたボールを拾いにくいのです。
その結果、現在のトップレベルで採用されているフォーメーションは、ほぼペリミターと呼ばれるものになっています。
ペリミター・フォーメーションこのフォーメーションの特徴は、専門のフェイントカバー要員をおかずフェイントには主に両サイドのプレーヤーが飛び込むことによってカバーし、それ以外のプレーヤー(特にバックセンター)はコート外に弾かれるワンタッチボールへの対応を優先していることです。Vリーグや国際大会で、コートエンドに設置された仕切りやチャレンジ用のカメラをなぎ倒しながらワンタッチボールをつないで会場が大盛り上がりになるシーンも、このフォーメーションから生まれていたりするわけです。

もちろんペリミター・フォーメーションがもっとも一般的になっているからといっても、どのフォーメーションにもそれぞれの長所・短所があり、競技レベルやチーム事情・相手などによってどれを選択するかということは変わってくると思います。またラリー中に万全の態勢でディグ・フォーメーションが構築できるとも限りません。そのため今回書いてきたようなフォーメーションのいずれかを基本としつつ、実際の状況に応じての工夫が必要になるのはいうまでもありません。