スタッカート助走、またの名をスライド・アシスト

前回からおよそ一ヶ月開いてしまいましたが、今回はMBの攻撃をどのように効果的に シンクロ攻撃 を基軸とする攻撃システムに組み込んでいくか、という話です。

MBが攻撃を行う場合はほぼクイックといわれるファースト・テンポの攻撃になります。また攻撃に入る スロット はOHよりもセッターの近くです。この前提からすると、両サイドに位置するOHよりもMBの方が、背後からトスが上がってくる場合にはボールを視野に収めるためにより後ろ側を見る必要があり、それは同時に打つときにブロックが非常に見にくくなることを意味します。
MBとOHの視界差つまりただでさえ後ろから来るボールは打ちにくいのに、セッターに対してOHより相対的に近いMBはブロックを見て打ち分ける難易度が飛躍的に高くなるわけです。

そうなるとセッターとしては必然的にMBは使いにくくなります。仮にMBが攻撃に入っていたとしても、難易度の高いトスをブロックが見えない状態で打つ選手を選択するのはリスクが非常に高いからです。

ではこれをどう解消するか。MBがOHと同じような視界を持ち、ブロックを見て打ち分けられる状態を作ればいいわけです。具体的には、MBの視界が制限される原因はセッターからの距離、前後関係という2つの要素にあるのですから、これらを解消すればいいということになります。このうちセッターからの距離はいわゆる Aパス からのクイックでも同じことなので、結局問題は前後関係だということになります。

この前後関係を解消するのがスタッカート助走スライド・アシストと呼ばれる助走です。発想としては単純でパンがなければお菓子を・・・間違えました、セッターが後ろにいるなら自分も下がればいいじゃない、というものです。
スタッカート助走MBが下がって踏切位置をセッターの位置に合わせることにより、助走距離の確保と打つ際の視界の確保を行うことが可能となり、さらにはネット際ではしにくいフルスイングによるスパイクも楽になります。そのため相手ブロッカーはMBを警戒対象から外すことができなくなるわけです。警戒対象が多ければ多いほどリード・ブロックでは反応時間が長くなりますから、ネット際から下がって助走に入ってを繰り返すMBの体力的な負担は増えてしまいますが、それだけの価値はあると思っています。

またスタッカート助走(スライド・アシスト)はトランジションの局面だけでなく、サーブがどんどん強烈になって レセプション の難易度が高まってきている現代のバレーボールにおいて、「Aパスにこだわらずにまずは上にあげておけばいつもの攻撃ができる」という意識をレセプションをする選手が持てることでその負担を軽減する、という意味でも有効だと考えています。

日本ではまだまだネットに張り付いているMBが多い印象ではありますが、V.LEAGUEでもマイナス・テンポだけでなくファースト・テンポが多く見られるようになってきているため、今後はスタッカート助走ももっと使われるようになってほしいものです。

※スタッカート助走の説明付き動画

※冒頭に注目

※打った選手はシャットアウトされていますが、シンクロしているMBに注目

※踏切位置がネットから遠目の堺ブレイザーズ、出耒田敬選手

※女子でも遠目の踏切が使われている場面

※海外では育成段階でも

※2021年10月17日追加
https://rumble.com/vntdml-20211016-kyoko-aoyagis-incredible-31-quick.html