やりたいことをやられた日

だいぶ前のことになってしまいましたが、以前の記事でシンクロ攻撃の効果を上げるための方法について言及しました。具体的には主に リード・ブロック を採用する相手のブロックシステムをどう混乱させ打ち破るか、という問題です。

過去に何度か書いたように、”後出しじゃんけん”であるリード・ブロックに対して最も有効な手段は、相手ブロックが警戒しなければならない攻撃の選択肢を増やし、選択反応時間を少しでも長くすることによってブロックがついてくるよりも早く攻撃することです。
※トスのスピードを速くしてブロックの完成前に打つ、ではありません
そしてそういったシーンが5月末から6月末までにイタリアで開催された、Volleyball Nations League 2021 においてもたくさん見られました。日本戦もダイジェストも交えたものではありましたが、BS-TBSで全戦放送されたのは本当に嬉しいことでした。バレー好きな方々には録画を残しておられる方も多いと思いますので、今回は日本戦から2つの場面を取り上げてみたいと思います。

6月23日に行われた、日本vsアメリカで日本はシンクロ攻撃で選択肢を増やし、しかもスロットを工夫することによってブロックをきれいに分断・・・されてしまいました!

まず第2セットのアメリカの1点目を見てみましょう。
日本のブロックはやや広がった感じながらも バンチ・シフト でした。そしてアメリカの攻撃は11,21b,51,C1bの4枚。
シンクロ攻撃(21bパターン)この状況で日本のブロッカーは、ライトは ゲス・ブロック で51へ移動。センターは11へ コミット・ブロック。レフトだけがセットアップ先を見極めてからC1bへ飛びました。この場面で11へコミットするのは個人的には疑問を感じます。ライトのブロッカーが51へ移動していることから、センターが11コミットだと21bに上がった場合、ノーマークで打たれてしまう可能性があったからです。ただ結果的にC1bへセットアップされたことでレフトのブロッカーはセッターの背後にいるアタッカーが一人しかいないことから、スロットCからの攻撃だと瞬時に判断することが可能となり、決められてはしまいましたがノーブロックで攻撃されることは防ぐことができました。

これとの比較で、次はアメリカの13点目を振り返ってみます。
日本のブロックは1点目の時とあまり変わらず、ただしライトがセッターでなくOPになっていました。アメリカの攻撃は今度は11,A1b,51,C1bでした。
シンクロ攻撃A1bパターンここでライトとセンターのブロッカーは先ほどと同じ対応で11と51へ。先ほどとの違いは、トスがセッター背後に上がった場合のレフトのブロッカーの対応です。先ほどと異なり、今回はセッターの背後に攻撃の選択肢が2枚あります。つまり、トスが背後に上がった瞬間にスロットが決め打ちできず、どこに上がったかを見極めるための選択反応時間が必要になり、その分だけブロックが遅れることになります。これが以前の記事で書いた、相手のブロックの反応を遅らせるための考え方その2、に当たる攻撃です。
それを嫌ったのでしょうか、ギリギリまで我慢していたものの、トスがセッター背後に上がった瞬間にC1bへ移動。日本のブロッカーはリード・ブロックを捨てて相手のセットアップはC1bだろうとguessして素早く反応することを選択したわけです。まさにこれぞゲス・ブロックという場面でした。

しかしセットアップ先はA1bで、結果的にノーマークで強烈な一撃をもらうことになってしまい、ゲス・ブロックの弱点が露呈した場面でもありました。

この2つの場面、共通しているのはセンターがコミットしてしまった段階で、両サイドはどうやっても最大1枚しかブロックがつけず、しかもどちらかのサイドは2枚の攻撃に1枚のブロックで対処しなければならない、というところです。外野が口で言うほど簡単ではないことは重々承知してはいますが、やはり日本の場合、もう少し我慢してリード・ブロックに徹する、ということを考えた方がいいのかもしれません。

さてまもなく始まる東京オリンピックで、日本代表はどんなバレーを見せてくれるのでしょうか。今日書いた点についても、VNL2021の段階から進歩していてくれることを祈るばかりです。